大判例

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東京家庭裁判所 昭和38年(少イ)15号 判決

被告人 森格

一、主  文

被告人森格を罰金一万円に処する。

被告人において右の罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人に対し本裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。

二、理  由

(一)  罪となるべき事実

起訴状公訴事実記載のとおり

(二)  証拠の標目

(1)  夕張市長橘内末吉作成の○橋○子の身上調査回答書

(2)  第二回公判における証人○橋○一の供述

(3)  第二回公判における証人風間邦介の供述

(4)  第二回公判における証人森幸子の供述

(5)  第五回公判における被告人森格の供述

(6)  昭和三八年中に撮えいされた○橋○子の写真

(三)  法令の適用

児童福祉法第三四条第一項第五号、同第六〇条第二項(罰金刑選択)

同第六〇条第三項、換刑処分について刑法第一八条

刑の執行猶予について刑法第二五条、罰金等臨時措置法第六条

(四)  (1) 被告人は、○橋○子を雇い入れた事実を否認しているが、証拠の標目(4)(5)によれば被告人は簡易料理店「トリスバーカク」の品川区大井鎧町三五三四番地にある本店と大井二葉町の支店とを経営する者であること、事実上大井鎧町の本店の営業はその母森幸子が主として担当しているが、被告人も本店をとき折り見廻つて監督していること、○橋○子を雇い入れるに際しても森幸子のみならず被告人も○子に面接していること、○子が大井鎧町の本店の営業のみでなく、大井二葉町の支店の雑用にも携つていたことが認められるので、被告人が「トリスバーカク」の本店、支店の経営者であり従つて○橋○子の雇主であると解するのが相当である。

(2) 被告人は、○橋○子に酒席に侍する行為を業務としてさせたことを否認し、女給の見習として雑役をさせていたにすぎないと主張しているが、証拠の標目(2)ないし(5)によれば、大井鎧町の「トリスバーカク」は三、四坪の広さの店内にテーブル三つとスタンド六つを置き、午後一一時四五分頃まで酒を客に供するバーで、昭和三八年八月二〇日頃から同年一〇月九日頃までの間は被告人の母森幸子、バーテン小野くにひろ、女給米倉文代と女給の見習として雇われた○橋○子が店で働いていたものであること、○子も店内にあつて客と話をしたり客の注文を聞いたり品物を運んだりしていたことが認められるので、主として雑用に従事させていたとしても前記のような店の営業の種類、規模、構造から判断すると○子も酒席に侍する行為を業務としていたものというべきである。

(3) 更に被告人は○子の年齢を知らなかつたことについて過失がないと主張している。○子が年齢の割に身体が成熟していたことは第三公判における証人宮崎節生の供述によつても認められるが、児童福祉法第六〇条第三項の趣旨は、児童の外観上の発育状況からのみ判断して正確な年齢を確認するための相当手段を怠ることは許されないと解すべきである。又被告人が○子の年齢確認のため○子に対し戸籍抄本や住民登録票の提示を求めていたという前記証人森幸子の供述及び被告人の供述各部分は信用できない。(右供述によれば被告人及び森幸子は○子が十八歳以上であると信じていたし、同人らは従業員を雇うとき通常は戸籍抄本や住民登録票の提示は求めていなかつたというのであるから)とすれば、○子が外見上成熟した女性のように見えても(証拠標目(6)の写真によれば児童でないとは必ずしも見えないが)被告人が年齢確認のための相当手段をとらなかつた以上前記のような過失がなかつたとはいえない。

(4) しかし、証拠標目(3)、(4)、(5)によれば被告人の営業は堅実なバーであり、又被告人の母森幸子が○子の身の上に同情して親身になつてその世話をしていたことが認められるので、○子が被告人の店に働いていた間酒席で働くことによる身心の悪影響はあつたにしても、○子のような少年が堕ち入り易いそれ以上の不健全な生活に陥落することもなく過していたことから考え、被告人に対し罰金一万円に処し、罰金を完納することが出来ない場合は金五〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置するものとするとともに、特に異例ではあるが、本裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予することとして

主文のとおり判決する。

(裁判官 三淵嘉子)

(参考)起訴状記載の公訴事実

被告人は東京都品川区大井鎧町三五三四番地において簡易料理店トリスバー「カク」を経営するものであるが、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和三八年八月二〇日頃から同年一〇月九日頃までの間、児童である○村△子こと○橋○子(昭和二四年六月一三日生)につき適切な年齢確認の方法を尽さず、女給として雇入れ右営業所で使用して酒席の相手をさせ、もつて満一五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせたものである。

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